










|

ニ ュ ー ス
23 May 2002 − 「京都議定書」発効に向けて―「マラケシュ合意」採択から
|
モロッコのマラケシュで「第7回気候変動枠組条約締約国会議」(COP7)が開催され、「京都議定書」の運用ルール(マラケシュ合意)が採択されてから半年が過ぎました。
各国の利害が対立し、予想外に難航した運用ルールの交渉は、最終日を過ぎた翌11月10日の早朝にようやくまとまり、「京都議定書」発効に向けて一歩前進しました。2001年7月にボンで開催された「COP6再開会合」で合意が得られた運用ルールの枠組み(ボン合意)を詳細に成文化したもので、これにより各国が批准する上での障害はなくなりました。
2000年11月にハーグで開催された「COP6」が決裂し、さらに翌2001年3月にはブッシュ大統領がアメリカの経済に打撃を与えるなどとして「京都議定書」からの離脱を表明。これを受けて、数日後にはEU諸国が「アメリカ抜きでも議定書発効をめざす」と発表するなど、合意に到るまでの道のりは多難でしたが、1997年12月の「京都会議」(COP3) においてかろうじて採択された「京都議定書」は、4年を経て、ようやく批准できる形になりました。
最大のCO2排出国であり、90年には先進国全体の36%の排出量を占めている(「条約事務局」発表)アメリカの「京都議定書」離脱後、「COP6再開会合」以降に顕著になってきたのは「アメリカ離れ」の空気でした。NGOと共同歩調をとり、持続可能な開発へと産業構造の方向転換を進めてきたEUは、アメリカ抜きでの議定書発効との姿勢を変えず、両者の対立は決定的となりました。こうなると、日本やカナダなどのアンブレラグループの批准が議定書発効に不可欠となってきました。日本はカナダなどとともに強く要求していた「森林による二酸化炭素吸収分(シンク)を大きくカウントする」ことをほぼ全面的に認められ、さらには削減目標が守れない場合の罰則規定を緩めようという日本の要求も一部認められて、最終的に議長案に合意しました。アメリカが拒絶している「京都議定書」を支持するという日本の決断は、「戦後の東京が示したアメリカからの最大の独立宣言ではないか」などとも言われ、ともあれ、日本はEUとともにアメリカなしでも温暖化抑制策を推進していくという意思を世界に向けて発信しました。EUはアメリカの一極構造に対抗する新しい勢力の中心となり、「核が幅を利かせるような粗野なやりかたをとらなくても、世界の精神的なリーダーになり得る」という自信を深めました。
それまで「ブッシュにつくか、未来の子供たちの側につくか」と強硬な論調を崩さなかったEUが、日本などを引き入れるために大幅な譲歩をし、森林吸収でバーゲンが行われた結果、「京都議定書」は救われましたが、その抑制効果自体は薄れてしまいました。日本の、「議定書批准を人質に取れるだけとってやろう」という姿勢は内外のNGOから強く非難されました。日本はその強い立場を利用して勝者となったかもしれませんが、敗者に追い込まれたのは地球環境であり、将来の世代であることは明らかです。
「COP7」では、日本とともにロシアなどが削減義務の不遵守に対して法的拘束力を持たせることに強く反対しましたが、遵守委員会を設けることや不遵守に対する具体的な措置を定めるなどの基本的な枠組みが合意採択されました。しかしながら、広大な森林を有するロシアが「シンク」でさらなる譲歩を引き出すことに成功するなど、日本・ロシア・カナダ・オーストラリアの'Gang of four'(「4人組ギャング」)と呼ばれたアンブレラグループ は「ボン合意」をさらに希薄化してしまいました。とりわけ日本は、「本日の化石賞」で1位とされるなど、その後ろ向きの姿勢を強く印象付けてしまいました。
また、最終日には「マラケシュ閣僚宣言」が採択され、8月末から南アフリカのヨハネスブルクで開かれる「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(環境開発サミット)を気候変動と持続可能な開発とのつながりを扱う重要な機会と認識し、持続可能な開発を可能にするために「生物多様性条約」や「沙漠化防止条約」との協調を続けていくことなどを呼びかけました。
衆院は5月21日の本会議で、「京都議定書」批准案を承認しました。政府は、同時に「地球温暖化対策推進法改正案」も可決。6月上旬にも議定書を批准することが事実上、確定しました。これにより日本は、08〜12年(第1約束期間)までに90年比で6%のCO2などの温室効果ガスの削減義務を負うことになりました。
今後は議定書の発効が焦点となりますが、EUや日本が目標としている「環境開発サミット」開催中の発効を可能にするには、要件が満たされてから発効までに90日の猶予期間が必要とされるため、先進国の6月初め頃までの批准が不可欠となります。議定書の発効には(1)条約締約国の55カ国以上が批准し(2)批准先進国の排出量の合計が締約国の90年総排出量の55%以上となる必要があります。EU各国が6月1日までの批准方針を明らかにしていますが、5月6日現在で批准した締約先進国は54カ国中2カ国にとどまっており、またロシアも早期批准に慎重なため、サミット中の発効は難しいとの見方も出てきています。
日本の温室効果ガス排出量は年々増加傾向にあり、99年では90年比約7%増となっているため、今後実質約13%の削減が必要です。政府は「京都議定書」の目標を達成するため、3月に決定した「改訂地球温暖化対策推進大綱」(新大綱)で産業、民生、運輸の部門別削減目標と対策を示しましたが、経団連などが削減義務の不遵守に対して法的拘束力を持たせることなどに反対しており、今後も経済産業界からの反発が予想されます。しかしながら大量生産、大量消費、大量廃棄というこれまでの産業構造を転換することなしに、議定書の目標達成は難しいでしょう。
今後は第2約束期間以後のより高い削減目標をも視野に入れ、「炭素税」の導入など、化石燃料の消費を抑える効果の大きい措置を講じる必要があります。また、日本を含む先進各国は、環境と貧困の問題は表裏一体であることを再認識し、南北間格差をより広げている従来の自由貿易から公正な貿易形態へと大きく舵を切り替えていかなければなりません。
日本が主体性と信念をもって議定書を遵守し、環境と経済の両立を可能にする仕組みの構築を図り、世界の模範となれるような大胆な政治決断が求められています。
|
目次へ戻る
|
|
|
|
info@npo-fg.org
1-33-5-203 Kameido, Koto-ku, Tokyo, Japan
Copyright 2002 FOREVER GREEN All Rights Reserved.
|
|